ときどき難解なところがあるかもしれませんが、その病気を患っている子の飼い主さんには、興味をもっていただけるかと思います。
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猫汎白血球減少症の予後因子
Prognostic Factors in Cats with Feline Panleukopenia (pages 1271–1276)
B.D. Kruse, S. Unterer, K. Horlacher, C. Sauter-Louis and K. Hartmann
Journal of Veterinary Internal Medicine November/December 2010
- 猫汎白血球減少症について・・・
- 猫パルボウイルスといわれるウイルスが原因であり、接触感染により感染します。
- 症状:年齢・免疫状態・他の感染症併発の有無によって、異なります。
- 発熱、元気・食欲低下など
- 初期には嘔吐、まれに水様性下痢
- 2次的な最近感染・敗血症・脱水・DIC(播種性血管内凝固)などで死亡に至ります。
- 12か月齢までの子猫では罹患率・死亡率が最も高くなります。
- 急性の汎白血球減少症では死亡率25~90%
- 超急性では、死亡率~100%
- 犬のパルボウイルス感染症と比べて、予後(病状の経過)にかかわる因子は報告は限られています。
- ちなみに犬では・・・
- 著しい白血球減少・リンパ球減少・単球減少・好酸球減少がみられると、予後が悪い。
- 血清コルチゾール値が正常に戻らないと予後が悪い。
- 死亡例では、血清サイロキシンおよびコレステロール値が著しく低い。
- 死亡例では、SIRS(全身性炎症反応性シンドローム)がより多く発生している。
- 若齢犬では予後が悪い・・・などの因子がしられています。
- この研究はどうやって?・・・
- ドイツのLMU univerisity of Munichという大学病院で、1990~2007年に244頭の猫汎白血球減少症と診断した猫を調査しています。
- 結果は?・・・
- 全体の生存率は51.1%でした。
- 生活環境・年齢・ワクチン接種の有無・症状の強さによって、経過の差はありませんでした。
- ただし、ワクチンを注射した猫のなかで、12週齢以降ワクチン接種しているものはいませんでした。
- 死亡例では、来院時にあきらかな白血球減少および血小板減少症を起こしていました。
- 白血球が1000/μl以下の猫では、1000~2500/μlの間の猫の1.77倍、2500以上の猫の1.85倍の死亡率がありました。
- また、血清アルブミンが30g/l以下、血清カリウムが4mmol/l以下の猫では死亡率が高いことがわかりました。
- つまり・・・
- 12週齢(3か月齢)以降のワクチン接種を行っていない子猫は、汎白血球減少症の予防としては不十分かもしれません。
- 白血球減少・血小板減少・低アルブミン・低カリウムは、汎白血球減少症の猫の良くない因子になります。
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日々、目の当たりにする病気ではないものの、この病気にかかった場合回復する可能性は、この研究でも50%。。
できることとしては、なにより予防。
子猫には、ワクチンを12~14週齢(3~3.5か月)まで、3~4週間ごとに受けさせてあげてください。
そのあとは1年後、さらにそのあとは3年ごとの接種(・・・これは毎年接種すべきか、という論議があります)を行います。